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SEASON #16 ” TOTSUKAWA “
十津川は紀伊山地、熊野の山奥にある、熊野川本流の川。日本書紀にも遠津川という、遠いところの川として記録されています。奈良に行こうと思って調べているうちに、熊野古道に行きたくなり、そのまた奥の何もない山奥に行きたくなり、そうしてこの場所に辿りつきました。今でもとても遠いところでした。電車は走っておらず、長距離バスで訪れました。バスが川縁を、山の中を、走っていくと、空気は山々の澄んだ呼吸になっていきます。平地はほとんどなく、標高が上がり、雲が山の中腹に漂っています。隠れ里。という言葉が浮かびます。 民族学では、山に住む神人が、冬の祭りなどに里へ現われ、鎮魂の舞を舞った後、いずこともなく去っていく山間の僻地を指すということです。山は神々が棲む処。木にも草にも神が宿っている、人間の世界とは違う時の流れがある。紀伊山地は、神話の時代から神々が鎮まる特別な地域と考えられていました。 仏教もこれらの深い山々を浄土に見立て、超自然的な能力を習得するための修行の場としました。「熊野三山」 「高野山」「吉野・大峯」という三つの霊場があります。霊場に参るのが5つの熊野古道。十津川村は小辺路と中辺路、大峰奥駆道が交わる付近にあります。 熊野本宮から吉野へつづく大峰奥駈は、起死回生の「よみがえりの道」だったそうです。深い山は今でも道を見失う人がたくさんいるそうです。 十津川の小辺路の参道には果てしないという名前の果無集落があります。何もないのに、たくさんの魂が詰まっている。 空気が研ぎ澄んでいる。日によって、透き通った空の色や濁った鶯色や蒼緑色に変わる川。 そして原風景から音が奥の方から聞こえてきます。 音楽家の冥丁の音に共通するものがあり、冥丁にオリジナルの曲を作ってもらいました。
(Text by seya.)
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去年People care.Planet careのゆうひさんのプレイリストから冥丁さんを知り、すごく心地の良い音楽で格好良いなと思いお店でもかけていました。お客さんも冥丁さんの事が好きな方がいてこの曲が良いとか色々教えてもらいました。そして瀬谷さんの新作を見に行くと、冥丁さんに曲を作ってもらったと。ルックのモデルもされていました。不思議な縁を感じました。今回コレクションのテーマとなる場所は奈良の十津川村。僕たちもその近辺には何度か訪れたことがあります。あの空気とseya.の色、冥丁さんの音楽が共鳴している、そんな風に思いました。沢山のコレクションの中から僕たちが思うTOTSUKAWAを選びました。是非ご覧ください。
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